少し昔、異機種のコンピュータ同士を接續するのは大變困難なことでした。コンピュータのアーキテクチャが異なつてゐたためです。
そこで、異機種のコンピュータ同士の接續のためのネットワークアーキテクチャを標準化する目的で、ISO、國際標準機構が全部で機能を七層に纏めました。これがOSI基本參照モデル(Open Systems Interconnection)です。これに準據すれば、異機種間の接續も可能になります。
階層が高いほどユーザに近くなり(ソフトウェア)、階層が低いほど物理的になります(ハードウェア)。次に、七層の名稱を示します。
階層 | 名稱 |
---|---|
第七層 | アプリケーション層 |
第六層 | プレゼンテーション層 |
第五層 | セション層 |
第四層 | トランスポート層 |
第三層 | ネットワーク層 |
第二層 | データリンク層 |
第一層 | 物理層 |
プロトコル、とは簡單にいふと、規定です。データ通信に用ゐられる「プロトコル」といふ語は、ネットワーク上での通信に關する規定で、通信規約とも呼びます。
プロトコルは、四つの基本要素から成り立つてゐます。一つ目は傳送路の物理條件で、これはケーブルの材質やコネクタの形状などが規定されてゐます。二つ目は傳達で、アクセス制御や誤り制御、フロー制御などの方式が規定されてゐます。三つ目は相手の特定で、複數の端末が接續されるネットワークにおける通信先の特定方法が規定されてゐます。四つ目が情報表現で、ビット列の表現ルールを規定してゐます。
先に示したOSI基本參照モデルと各プロトコルは大體對應してゐて、それは先程幾つか例を擧げました。その中で、代表的なプロトコルに就いて少し詳しく見ておきませう。
このプロトコルは現在このページを閲覽するのに用ゐられてゐます。このプロトコルは、WWWサーヴァとクライアントの間で、HTMLの送受信を行ふための規約を定めたプロトコルです。OSI基本參照モデルでいふと、第七層のアプリケーション層に該當します。また、使用するポート番號は80番です。
HTTPは、主としてHTMLやXMLで記述されたハイパテキストを送受信するときに使用することが目的ですが、HTMLやXML文書に限らず音聲や畫像などのバイナリデータも送受信することが可能です。
またHTTPは、リクエスト-レスポンス型のプロトコルであり、クライアント側のリクエストに對してサーヴァがレスポンスを返すといふ方式です。
このプロトコルは、ファイル轉送に用ゐられるプロトコルです。主な用途としては、Webサイトを作られたことのある方は分かると思ひますが、Webページ用のHTML文書や畫像などをクライアントのパソコンからサーヴァにアップロードするときに用ゐられます。或は、ソフトウェアなどの配布をFTPを用ゐて行つてゐるところを見たことがあるかもしれません。
このプロトコルはOSI基本參照モデルでいふと、第六・七層のプレゼンテーション層・アプリケーション層に當たります。ポート番號は、制御用が21番、データ用が20番になります。
このプロトコルは、遠隔地のサーヴァを端末から利用できるやうにする、假想端末機能を提供するプロトコルです。OSI基本參照モデルでいふと、第六・七層のプレゼンテーション層・アプリケーション層に當たります。ポート番號は普通、23番が用ゐられます。
このプロトコルは、メール送信時や、サーヴァ間でのメールの送受信に用ゐられるプロトコルです。OSI基本參照モデルでいふと、第六・七層のプレゼンテーション層・アプリケーション層に當たります。ポート番號は、通常25番が用ゐられます。
このプロトコルは、メールサーヴァのメールボックスからメールを取出すときに用ゐられるプロトコルです。現在は、改良されたPOP3が用ゐられてゐます。OSI基本參照モデルでいふと、第六・七層のプレゼンテーション層・アプリケーション層に當たります。ポート番號は、POP2では109番、POP3では110番が用ゐられます。
LAN(Local Area Network)は、或特定の、狹い範圍内(ある建物内や敷地内など)で施設したネットワークのことを言ひます。端末同士を接續する媒體には、以下のやうなものがあります。
LANでは、複數の端末を接續しますから、單にある端末がある端末宛にデータを送つてもうまく傳送できません。そこで、どの端末にデータの送信權を與へるかが問題になります。どの端末に送信權を割り當てるかを決める方式をアクセス制御方式と言ひます。
CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)は、非常に單純な、亂數を使用した方式です。
先づ、送信元端末は、LANの傳送路が使用中か否かを調べます。使用中でなければ、データを送信します。データは全端末に送信されるので、受信側端末は、自分へのデータだけを受信します。
このとき、複數の端末が同時にLANにデータを送り出すことがあります。これが起きると、データが傳送路の途中で衝突してしまひます。これをコリジョン(Collision)と言ひます。コリジョンが發生した場合、各送信元端末は一旦データの送信を中止し、亂數に從つた待ち時間のあと再送を行ひます。
CSMA/CD方式では、同一LAN上に接續される端末の數が多くなると、データの衝突が發生しやすくなつてしまひ、結果、データの傳送效率が下がり、傳送がなかなか終了しなくなつてしまひます。
トークンパッシング(token passing)は、データの衝突が發生しない方法です。
LANの傳送路上に、送信權を與へるトークンといふ信號が一つ巡囘してゐます。送信元端末は、そのトークンを取得し、データと送信先アドレス、送信元アドレスを付加して、ビジートークンに變へてから送信します。
受信側端末は、自分宛のビジートークンが來たらデータを受け取つて、受信完了のマークを付加して再度傳送路上を巡囘させます。送信元端末は、受信濟みであることを確認したあと、トークンをフリートークンに戻してからもう一度傳送路上を巡囘させます。
この方式では、トークンを獲得した端末のみがデータを送信できるため、データの衝突が發生せず、LAN上に接續される端末の數が多くなつても、一定の時間で傳送が終はることが保證されてゐます。
LAN同士を接續する際には、LAN間接續裝置を用ゐて信號を中繼します。OSI基本參照モデルのどの層で中繼するかによつて、接續裝置が異なつてきます。
リピータは、LANの傳送距離を延長するために、OSI基本參照モデルの第一層、物理層で接續する裝置です。
リピータは、物理的に、減衰した電氣信號を増幅し、傳送距離を延長します。單に電氣信號を増幅するだけの裝置なので、宛先などの判斷は行はれません。ですから、LAN1とLAN2を接續したとき、LAN1内だけでやりとりするデータがLAN2にも流れてくることになり、トラフィックが増大してしまひます。
ブリッジは、二つのLANをOSI基本參照モデルの第二層、データリンク層で接續します。
ブリッジは、流れてきたパケットの宛先MACアドレス(LANボードやLANカードに割り當てられた世界で一意の番號)を元に、交通整理を行ひます。例へば、LAN1とLAN2が接續されてゐるとき、LAN1内だけでやりとりするデータはLAN2に流れてきません。ブリッジが「送信せず」と判斷するためです。
ルータは、二つのLANをOSI基本參照モデルの第三層、ネットワーク層で接續します。
ルータは、流れてきたパケットの宛先IPアドレスをもとに、送信するか否かを判斷します。なので、或るLAN内だけでやりとりするデータは他のLANには流れず、他のLANへの傳送經路は最適な經路を選擇されて傳送されます(ルーティング)。
ゲートウェイは、OSI基本參照モデルの第四層以上の全ての層で、プロトコル體系の異なるLANを接續し、プロトコル變換を行ひます。